桃の品種
桃はとても多品種。
桃には、非常にたくさんの品種があり、その理由は大きくふたつに分かれます。ひとつはもちろん、病気にも強い、美味しい桃を改良してつくるという、一般の方にも想像しやすいもの。そしてもうひとつは、まさに生産の現場を知らないと想像もつかないものだったりします。
桃が多品種な意外な理由とは?
桃は熟してくると、収穫まで1日も待ってくれません。完熟した桃は、放っておくとすぐに落下して商品価値を失います。桃狩りなどに行かれた方はご存じかもしれませんが、桃畑に行くと、落下したての美味しそうな桃が、拾われもせずにほったらかしになっています。これは、収穫の手間が追いつかずに落下してしまい、一度落下した桃は商品にはならないので、後にまとめて土に穴を掘って埋めたり、廃棄物として処理されます。
畑の桃の木が一斉に実を熟してしまうと、収穫の手がいくらあっても足りなくなってしまいます。生産者からすると、畑の桃の木から桃を収穫するペースと近いペースで、少しずつ熟す木が移動していくことが理想となります。畑の桃の木が全部同じ品種では、なかなかそうはなりませんので、少しずつ違う品種を植えておくと、収穫の時期が少しずつずれていくことになり、とても都合がいいのです。似たような品種でも、少し収穫期がずれるだけで大きなメリットがあるのです。
枝変わりの桃
積極的な品種改良以外にも、枝変わりと言って、一部の枝だけが突然変異でその品種の特徴と違う桃が穫れるようになることがります。枝変わりした部分を、挿し木などで増やして、独立した品種として世に出回るのです。
そういったこともあり、桃には様々な品種が存在します。
白桃(はくとう)
上品な甘さが特徴の白桃ですが、白桃のなかでも様々な品種があるので、一概に「白桃は・・・」と言ってしまうのは早計。白桃の改良品種は、「浅間白桃」や「川中島白桃」など、収穫期も若干違い、味の特徴も少しずつ違っています。7月末から8月中旬あたりまで収穫できます。
白鳳(はくほう)
最も人気のある桃。
白鳳は果汁が多くて酸味はほとんどありません。瑞々しくて柔らかい肉質の桃が好きな方にはイチオシです。白鳳は桃の中でも、名実ともにNo.1といえるでしょう。品種名を知っている方も、白鳳という名前が一番知られていることも、その裏付けになると思います。国内の作付面積でも、白鳳が堂々の1位。やっぱり桃の代表種ですね。
黄桃(きもも)
黄色い桃、黄金桃。
缶詰などでおなじみの黄桃。これを「おうとう」と読んでしまうのは、ごく普通だと思います。ですが、なんとこれは正式には「きもも」。「おうとう」は「桜桃」で、これはサクランボのことになってしまいます。なかなか違和感はあると思いますが、黄桃はぜひ「きもも」と読んであげてください(笑)。
当店で販売している黄桃の品種は「甲斐黄桃」と書いて「かい・きいとう」と読みます。これもまた読みずらい!(笑)
「川中島白桃」から偶然誕生した品種で、果肉はみごとな黄金色。果皮も黄色っぽいのですが、甲斐黄桃はたっぷり日差しを浴びると、見事に真っ赤に色づきます。果肉はトロッとした舌触りで、普通の桃のように繊維が多くありません。甲斐黄桃は、普通の桃が出尽くした後、シーズン最後の桃の食べ納めとして9月に収穫となります。